>20のお題TOP



アイツの笑った顔は、何故だか 俺を安心させる。今も 昔も ―――― 。







その少年は、そこに立ち止まって、大きな門を見上げていた。
「来たぜ。」
自信満々に呟く。

彼はしっかりした足取りで、その大きな門をくぐった。
脇の柱には「真央霊術院」の大きな文字。

異例の若さで入学試験をトップの成績で合格した少年 日番谷 冬獅郎。
―― 彼の能力を考えれば当然なのだが。


彼は初めて入る建物にも関わらず、迷うことなく廊下を進んで行った。
自分が来期からここに入学する事を、一番先に伝えたい人がいた。
その人の気配(霊圧)を探れば、迷う事などない。
それに向かってずんずん大股で廊下を進む。

とある教室の前で止まる。
彼女はここにいる。
そっと中を覗いてみる。
会うのは久しぶりだが、間違えることはない。

雛森 桃。


久しぶりすぎたせいか、突然緊張してきて、少し遠慮がちに声を掛けようとする。
「も・・・・。」
「おぅ! 雛森! メシまだか!? メシ行くぞ!」
日番谷の声にかぶって、背後から男の声が響いた。
驚いて振り向くと、二人の男が日番谷に覆いかぶさるようにして、勢い良く教室を覗き込んだ。
赤い髪のガラの悪そうなヤツと、もう一人モジモジしていて顔色の悪そうなヤツ。
二人とも、自分よりはるかに身長がデカい。

「あ! 阿散井クン! 吉良クン! 何処行ってたの!?」
机に座っていた桃がパッと振り向いて笑顔を向ける。

桃の知り合いかよ!?
日番谷は少しムッとしながら身を引いた。
暫く会わないウチに、こんな変な連中と付き合うようになったのかよ!?
そして誰に対しても、そんな笑顔を向けるんだな!


桃は幼馴染だ。日番谷より少し年上だが、いつも一緒にいて日が暮れるまで遊んでいた。
それが当たり前の毎日だった。
ある日、彼女がこの真央霊術院に入学し寮に入ってしまってなかなか会えなくなった。
長期の休みの時には戻ってくるが、それも最近は忙しいらしく、なかなか長くは会えなかった。

それを寂しいと思った事はないが、どうゆうわけか興味無かったこの真央霊術院に入学する道を自然に選んでいた。
それを桃が切欠だと素直に思いたくない自分に、日番谷は気が付いていた。


声を掛けそびれて、どうしたものか思案している日番谷を余所に、桃は机の上を片付けて立ち上がった。
それから突然、少しきょとんとして挙動不審に辺りをキョロキョロし、視線を宙に泳がせた。
「ひ・ひ・雛森クン、どうしたんだ?」
「何故ドモる? お前。つか何してんだよ、雛森、早く行くぞ!メシ!」
「うーーーーーーーーん・・・。ちょっと待って・・・。」
桃は気の抜けたような声で返事を返し、そして泳がせていた視線を、男二人の影になってしまっている日番谷でバチッと留めた。
「やっぱりー! シロちゃんだ!!」

「やッ! てめぇ! 人前でその呼び方辞めろ!」
日番谷は、どうゆうわけか顔を赤くしムキになって怒鳴り返した。
久しぶりに会って、最初の会話がコレかよ。
「なんだぁ!? ここはガキの来るところじゃねぇぞ!」
「そうだよ。早くお家に帰ったほうがいいと思うよ。」
デカい男が二人して口々に言う。
コノヤロウ・・・・と、日番谷が二人を睨みつけ、赤い髪の方があからさまにムッとした顔をする。
「なんだ?可愛くねぇガキだな・・・」
「違うよ! 二人ともッ! シロちゃんはね・・・・・ッ!」

あわてて桃が教室を出て来て。
そして、日番谷の方を向き、思いっきりの笑顔を向けて。


「入学おめでとう! 日番谷クン!」


と言った。



その笑った顔は昔と少しも変わってなくて。
日番谷は嬉しくなった。





 




ワタシの日番谷クンのイメージは、桃より後に入学してきて、
飛び級(!?)で、あっという間に追い越して卒業して行ってしまう天才児デス。
そして、日番谷クンは、最初は桃の事を「桃」と呼んでいたに違いない。間違いない!(クッ!)