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中忍試験  ――――― 





 ――――― 何故 立ち上がるんだ!?


立っていられるはずない。
死ぬぞ。

努力しても出来ない事もある。
何故わからない?



それでも立ち上がる貴方をオレは、
痛めつけることしか
傷つける事しか
出来ないのに。


これ以上・・・・。
もう立ち上がらないで・・・。



お願いだから ―――――――― 。







その日、用事で宗家に出向いたネジが帰りに何気なく本家の稽古場を覗くと
薄暗い稽古場でヒナタが一人ボーっとしていた。

一瞬声を掛けようか迷ったが、一歩踏み出したネジの気配にヒナタが気が付き振り向いた。
薄暗くてはっきりとはわからなかったが、目が充血しているように見えた。
また一人で泣いてたのか。
ネジは思った。昔から何度も見てきた光景だった。

「ネジ兄さん・・・。来てたの・・・・。」
「何してるんだ?」

「・・・・・。」

ヒナタの手には額当てがあった。

「そうか、今日は卒業試験だったのか・・・・。」

ヒナタの事を可愛そうに、と思う。
既に宗家の期待はヒナタでなく、妹のハナビに向いている。
長女のヒナタが下忍になっても、誰も祝いの言葉も言ってやらないのだろう。

その前に、ヒナタが報告すらしていないのではないか?
ネジは目の前の俯きがちのヒナタを見た。

「今日から下忍だな。」
「・・・・・そうね。兄さんと同じね。少し追いついた・・・・かな。」

そう言ってヒナタは少し笑顔を見せた。
次の言葉を期待している顔だ。
しかしネジが言ったのは祝いや労いの言葉ではなかった。



「何故? そんなに無理をするんだ?」

ヒナタが一瞬にして表情を変える。
当たり前だ。
自分でも驚くほど冷ややかな声だった。

「え? 無理・・・・って?」
「だから、そんな無理してまで何故忍になろうとする?」
「あの・・・・。」
ヒナタが目を逸らして口ごもる。
嫌な空気が流れた。




「そんな・・・・・。
 確かに、すごく頑張ったけど・・・・。でも・・・無理だなんて・・・・・。」


そう。
知っている。
毎日毎日一人で遅くまで稽古をしていた。
ヒナタは日向の本家に生まれながら、忍の才には恵まれてないようだった。
だからこそ、まわりに追いつく為に、人一倍、いやそれ以上の努力をしていた。

ネジはそれを知っていた。
多分、日向の中でただ一人。
そしてその事は誰にも言わなかった。自分だけが知っていたかった。


「ヒナタ様には似合わない。そんな額当てなんか。
 下忍になってオレに追いついたつもりか?」


「そんな・・・・・・つもりじゃ・・・・・。」

そのままヒナタは俯いて何も言わなくなった。

先に気まずい空気に耐えられなくなったのはネジの方だった。
黙ったままのヒナタを残し、その場から離れる。



稽古場の入り口のところで一度振り返る。
ヒナタはまだ同じ場所に立ちつくしたままだった。
額当てを握り締めた手が震えているのがわかった。





どうして。


どうしてオメデトウと言ってやれなかったのだろう。

薄暗い廊下を歩きながらネジはすぐに後悔しだしていた。
しかしどうにもならないのだ。
ヒナタの頑張りを知っていながら、それを素直に応援する事が出来ない。
常にどこかで「無駄なのに・・・・。」と思ってしまう。



どうして。



どうして ――――― 。



ヒナタが悪いわけではない。
宗家だから。分家だから。
その呪縛がそうさせているのだ、と。
そう言い聞かせるしかネジは自分を保てない。
どんなに努力しても。
どんなに願っても無駄だなのだと。








暫くして、町でヒナタを見かけた。
任務の帰りなのだろうか?
チームのメンバーと一緒だった。

楽しそうに笑い合っていた。

彼女のあんな笑顔を見たのは、久しぶりのような気がした。









「お前を日向に生んでやりたかったな・・・。」

どうして、そんな出来もしない言葉を残したのですか?


どうせなら、日向の外に生まれたかった。


そうすれば
彼女にもっと優しい言葉を掛けてあげられたのに。
彼女と笑い合っていられたのに。





――― 今のオレは目の前に立つ彼女を更に追い詰める事しか出来ないのです ―――










「だって・・・・。好きな人の前でかっこ悪いところは見せられないもの。」

貴方の言葉はオレの胸に突き刺さる。



それが自分でないことぐらい、わかりすぎて。
自分が彼女にとって、その存在にはなれない事も 痛いくらいわかりすぎて。













もう終わりにしよう。  ヒナタ様。







 




ネジヒナは、暗くて痛〜い感じの関係が好きで、ネジ⇒ヒナタです。
ネジの一方的な「可愛さ余って憎さ100倍」って感じです。

この二人はもうすごい妄想できそうな間柄ナのですが・・・・・。
下忍の子達って、確か年齢12〜14くらいとかでしょ?

それを知ってすごいブレーキが掛かり妄想しなくなりました・・・・・苦笑。
せめて15以上だったらなぁ・・・・。
ていうかこうゆうのって、マンガで描きたいな・・・・。その方が楽しい・・・。(私が)