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ねぇ、本当は私の事、どう思っていた?
少しくらいは認めてくれていた?
ずかずかと長い廊下を歩いていたメルティーナは、
立ち止まると大きくため息を付き、そしてワザと大きな身振りで振り返った。
「ちょっと! 付いてこないでよ!」
「別にキミの後をつけているわけじゃない。
僕はこの先の書庫に用があるんだ。キミこそ人の前を歩くのはやめたまえ。」
そこにいた眼鏡をかけた少年は、表情一つ変えずにその目を少し細めて淡々と返す。
あームカつく。コイツ。
キライ。
なんなの!?
最近じゃ時々しか授業にも顔を出さないし。
なにやら一人でブツブツ言ってる事も多いし。
そのくせ試験じゃ実技も筆記も学院トップ。
しかしそんな事はコイツは興味ないらしい。
そう自分が学院一だと思っていたのに、気がつけばいつもコイツが前にいる。
それだけでも許せないのに。
そんな首席の地位などまるで価値もないと言うようなその態度。
なんだか バカにされているようで ・・・・・ 。
だからこそ アタマに来る。
「あ〜ら奇遇ね!
アタシも調べ物があって書庫へ行くところなの。」
* * *
フレンスブルク魔術学院の書庫には膨大な量の魔術に関する書物が収められていて、
その種類と量は他のどの国の図書館なんかでも比べ物にはならない。
いつの時代のものかわからない古ぼけた書物が山のようにある。
書庫に入るとレザードはメルティーナを無視してさっさと目的の書棚へ向かう。
何故かメルも後に続く。
「ねぇ最近ますます研究に没頭しているようだけど、何をそんなに一生懸命調べてるのよ?」
「・・・・・・・・・。」
「言いたくないわけね?
別にいいわ。アタシだって、アンタの研究なんかにこれっぽちも興味ないから。」
周りがヒソヒソと話したり静かに読書をしている中、メルの声が響き渡る。
レザードは棚から本を取り出しページをめくり始めた。
メルティーナが横でごちゃごちゃ言って邪魔をしていたが、
レザードはそれを耳障りとは思わなかった。
メルティーナの考えている事はよくわからない。
自分に対して、どうゆう感情を持っているのか。
興味ないならさっさと行けばいい。何故いつまでもここにいるのか。
たいてい向こうから話しかけてくるのだが、いつも喧嘩ごしの口調だ。
この学院に入学以来、メルティーナは自分によく絡んで突っかかってくる。
周りのほかの者と自分とに対する態度とは明らかに違うのだ。
しかしレザードは不思議とメルティーナを嫌だとは感じなかった。
少なくとも魔術の話をして、自分の満足するレベルの回答をしてくるのは、
先生生徒含めて彼女だけだった。
とは言っても、人に回答を求めるような問題はレザードには皆無だったが。
レザードは少しだけ本から顔を上げてメルティーナを見る。
メルティ−ナは書棚によりかかってため息をついていた。
「あーつまんない。
何処かにいい男とのステキな出会いでも転がってないものかしら?」
レザードはそんな彼女に何故か笑ってしまうのだった。
* * *
「レザードが?」
メルティーナは、それだけ言って黙り込んだ。
言葉が続かなかった。
その後周りで理由とか何かを話をしていたが、そんな事どうでも良かった。
そして無言のまま学院長室を出た。
自室に戻る足取りは重かった。
いつか。 見返してやる。
そう思っていたのに、あまりにこれは突然だ。
* * *
そういつか。
アナタを越えたかった。
なんでこんなにアナタにこだわるのかしらね?
アナタが学院から居なくなってから、アタシは首席の座を手に入れたけど
本当に欲しかったものはより遠くなってしまったみたい。
他の誰でもない、アナタに、私を認めさせてやりたかった。
私の実力を
私という女を
アナタがいなくなってから、そんな事ばかり考えて
アナタのことばかり考えて。
―――― まるで恋でもしているようだったわ。
そんな事 ありえないけど。 ( あるわけないでしょ )
私ね、あの場所へ 行くわ。いつか絶対。
その時になって
私がその場所にたどり着いて アナタの手が届かなくなった時になって
アナタは初めて
私を 認めるんだわ ―――― 。
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