頑張る団長さん 





雪がパラつくある日の午後、アーリグリフ城廊下。
兵士達が立ち話をしている。

「なんでもアチラでは、パルミラの花を贈るのが、流行らしいぜ!」
「あぁ、千本集めるってアレか?」
「元々はそうなんだが、何も千本でなくてもいいらしいんだ。
 ソレを花飾りにして、思いを込めて相手に贈ると、成就するって話だぜ。」
「シーハーツの若い子達の中で最近流行ってる 告白 の定番らしい。」


「どうしたんですか? 団長。突然立ち止まって。」
「あぁ? いやべつに。」
「しっかし、ホント寒いですよね。早くカルサアに戻りましょうよ!」
「・・・・・お前、一人で戻れ。俺は急用を思い出した。」
「え? 団長?」
「2・3日、戻らないから、他の連中にも、そう言っとけ!」










多分、ダグラスの森。
そこを彷徨う団長の姿を見る事ができる・・・。



 



数日後の カルサア修練場。

「団長さん、夕食の準備が整いましたよー。どちらで召し上がります? 
コチラにおもちしましょうか?
まぁ、団長さん! もう薄暗いのに、明かりも付けずに何をして・・?」


「マユか。」


暫く姿を晦(くら)ましていた給仕係りのマユ。
何処に行ってたんだか知らないが、どうやら、何処かで割りのいいバイトをしていたらしい。
団長の俺に断りもなく、勝手に出て行って、勝手に戻ってきやがった。
まぁ、作るメシはそれなりに美味いから、いいか。


「何なさってるんですか? あー!ソレ、パルミラですよね?」
「知ってるのか? 」
「そりゃ、知ってますよ。」
さすがだ。いかにも、好きそうだな。

「上手く作れないんだが・・・」
「団長、手先はまるっきり、不器用ですものね! お手伝いしますよ。」

不器用とかいうレベルじゃない。この尖った義手の爪で何が出来るというんだ?

「悪ィな。」
「・・・それにしても、これ、どうするんですか? 」
「あぁ? どうって・・・。」
マユは、ただ聞いただけだ。しかし、ここで口ごもってはいけない。

「ジジィが、そろそろクタばりそうだから、供えてやる花を今から準備してんだ。」
スマネェ、ジジィ。しかし自分で言うのもなんだが、我ながら上手い言い訳だな。

「えぇ? 風雷様って、ヤバいんですか? 
でも・・・パルミラの花飾りって言ったら、最近若い人達の間で流行してる、 恋愛成就 のおまじないですよ?」

「え? そ・そうなのか・・・!? 」


もちろん、知ってるって。



「でも、団長さん、やっぱりお優しいところもあるんですね。  だって、風雷様の為に、ご自分で摘んでいらしたのでしょ?」
「バカ言え。何で俺がクソジジィの為に花なんか・・・ッ!」


「・・・え? でも、今ご自分で・・・。早くご病気がよくなるといいですね!」

「誰が病気なんだ?」
「風雷様でしょ? 団長、今そうおっしゃったじゃないですか? そろそろヤバいって。」

どんどん墓穴を掘っている気がする。マユが鈍感でよかった。
「あ? あぁ、言った・・・かな。」
「変な団長。 さ、出来ましたよ。」
「上手いもんだな。」
自分でやったら、一ヶ月かかっても、完成しそうになかった。はっきり言って。

「食事、もう出来てますから、冷めないうちに召し上がって下さいね!」






 



カルサア修練場 食堂。


食事にあり付く、むさくるしい漆黒兵たち。


はっきり言って、食べ方に品もマナーも何もない。


「最近、ウチのダンナ、部屋にこもりっきりで、何してるかと思えば 花飾り作ってるらしいよ。」
モグモグモグ・・・
「あぁ、じゃ、ついに行動を起こすというわけか。」
ガツガツガツ・・・
「伝わるといいなぁ。団長のキモチ。オクテだからなー。コレがダメなら、一生春はこない気がする。」
「返り討ちにされる方に3000フォル。」
「向こうも、ソッチ方面は鈍感そうだもんな。」
「でもアレ贈られれば、嫌でも気づくだろ、普通。」
「フツウ・・・はな。」
「団長も苦労するねー。」


話題の団長さんの部屋から引き上げてきたマユが食堂に入ってくる。
ここでは紅一点のマユ。漆黒兵達のマドンナだ。
( 通称”いかついオバサン”は数に入らない。)


「お。マユちゃん。団長の様子どうだった? 花飾りは完成しそうだったか?」
「何故知ってるんですか? 皆さん。」
「知ってるも何も・・・。」

「明日にでも、風雷様に渡しに行くんじゃないかしら?」
「・・・・・・?」

「風雷様って ??」
「何を勘違いなさってるのか、風雷様のご病気回復祈願だそうですよ。」


「・・・・・あの人、まるっきり元気だよな。」
「あぁ、つい昨日も、ルムと走り回ってだぞ。」


「え? そうなんですか? じゃあ、”早くクタバレ祈願” ・・・ですかね?」


「いや、根本的に、どっちも違うと思うケド。」









シランド城。廊下。



完成した”例のモノ”を持って、乗り込んできた、漆黒団長アルベル。
目的の女 ――――― ネル が 廊下を向こうからやってくる。
「また来たの。陛下なら、まだ謁見の間にいるよ。」
特に嬉しそうでもなく、迷惑そうでもなく。
「別にソコに用があって来たわけじゃねぇ。」
「へぇ。いつもの「お使い」じゃないのかい? 」


「違う。」
「珍しいね。じゃあ、何さ? 」
「・・・・・。」

「何の用事か知らないけど、私も忙しいから行くよ。」

「ま・待て! 」

「?」

「テメェにやるよ。」
「何? パルミラ?」
「・・・・・そう・・・言うらしいな。」
とぼけてみたり・・・。


「どうゆう風の吹き回しだい? コレは・・?」
「別にどうって訳じゃ・・・。」


「アンタにこんな少女染みた趣味があったとはねぇ・・・。 」
「・・・何が言いたい?」
「別に。想像出来なくってさ、アンタが”お花摘み”する姿なんて。」


貰ったんだ!! 」


「・・・・・ え? 」

一瞬表情が曇った・・・ように見える。
「・・・・・・そう・・・なんだ。」


少し目を伏せるネル。

「そんな・・・貰ったものを、簡単に人にやったりしちゃダメだよ。
 コレをアンタにくれた人は、きっとアンタに好意を持ってるんだろうからさ・・・。」

「・・・・は?」
何故そうなる? 


「この花飾りの意味、知らないのかい?」
「・・・・・・!」
しまった! そうゆう事か! 阿呆だ、オレ。


拾ったんだ! 」


「・・・拾った? 今、貰ったって・・・。」
「間違えた! 拾ったんだよ! いちいち、うるせェな!」


「・・・・・・・・・」


「だからいいんだよ!俺が拾ったモンをどうしようと俺の勝手だ!
テメェなんか、花なんて一生誰からも贈られそうにないからな。少しは有難そうにしてろ!」

「悪かったね。誰からも花も貰えそうになくて。」
「いや、そうゆう事じゃなくて・・・」
「いや、そうはっきり言ったよ、そのまんま。」
「・・・・・・・・・・。」


「お・おい! 何しやがる!」
いきなり花飾りに向かって施術を発動させるネル。
破壊するつもりか!? 
いくらなんでも、そりゃひどい!

「何って? 私にくれるんだろ? 
 私が貰ったものをどうしようが、私の勝手じゃないか!」

「やめろって、それを集めるのに、どれだけ苦労したか・・・ッ!?」

「拾ったって言ったじゃないか。それを苦労なんて、アンタさぁ、図々しいよ! 」
俺がどれだけ苦労したと思ってんだ!? この阿呆!!! 
一週間は森を彷徨ったぞ!! バカヤロウ!

「いいからやめろって!」

「バカ、手ェ出すんじゃないよ! 危ないから!」



「プリザーブド・フラワーだよ。」
「・・・は?」
「このままじゃ、すぐに枯れて変色してしまう。
こうしておけば、半永久的にこの鮮やかな色のままって訳。
アンタが拾ったか貰ったか知らないけど、この花飾り、せっかくだから私が貰っておくよ。
文句ある?」


「・・・え? そ・そうか・・・。それならいいんだよ。それならな。 」

一応、目的は果たされた。
ネルは受け取った。しかも半永久的に持っているつもりらしい。
しかし、なんだか納得の出来ないアルベルだった。


別に花を贈りたかった訳じゃねぇ。
何で気が付かないんだ、あの鈍感女!



 





数日後。
たまたま顔を会わせたネルとマユ。
二人はフェイトを通して知り合った。以来、結構仲良くしている。



「聞いてくださいよー! ウチの団長サンたら、パルミラの花を 自分で摘んできて、花飾り作ってたんですよ!  それがあまりに不器用で・・・。面白かったんですー!
ネルさんにも是非あの姿、見せたかったなー! 」

「・・・アイツが自分で摘んできた、だって??」

「でもウォルター様に差し上げるって言ってたのに、後でウォルター様に聞いたら、そんなの貰ってないって言うし、そもそも、ご病気どころか、お年の割りに元気すぎるし・・・
どうなってるのかしら?」

「・・・・・・・。」

「どう思います?」
「どうもこうも・・・・。」


誰に何を吹き込まれたんだか・・・。
思わず受け取っちゃったよ。ちょっとマズかったかなぁ・・・。

と思いつつ、なんだか顔が笑ってしまうネルだった。


 




プリザーブド・フラワーが施術で出来るかどうかは知りませんが。
フリーズ・フラワーとかドライフラワーなら出来そうですね。

マユは適当です。服、確認すればよかったな・・・。
そもそも、オフィシャル無視は全キャラ共通なので、許してください。(汗。

挿絵・・・。どれもコレも、サイズ圧縮したら、線がまるっきり、分からなくなりましたね。
ま・いっか。

→ もうちょい、大きいサイズのもあるので、良ければ見てやってチョ。(結局つぶれているけど。)