空色のうた



―――― ” 一緒に 暮らさないか ? ”




隣で静かな寝息を立てる男を眺めながら
こんなのも、まぁいいか、と思う。


特にどちらから、というわけでも無く、なんとなく会うようになっていた。
会っても交わす会話は他愛もない内容ばかり。

何故そんな事に時間を費やすのか。
恋なのか、それすら良くわからない。

ただ、こうして一緒に過ごせる時間が好きになっていた。
安らぎとは、意外なところにあるもんだと、思う。
そんなものとは、まるで無縁に見えるこの男に自分は安らぎを感じているのだ。


「起きてたのか?」
アルベルが、うっすら目を開けた。
「もう朝か?」
「まだだよ。でも、もうすぐ夜が明ける。」
ネルは窓の方に目を向けた。

少し開いたカーテンの隙間から、柔らかい光が差しこんでいる。
遠くの空は、白くなりはじめていた。
空と山脈との境がはっきりとしてくる。
少しまぶしそうに、腕を顔に乗せ光を遮えぎりながら、アルベルは言った。

「昨夜(ゆうべ)言った事だが・・・」
「ん? あぁ、戻るまでに考えておくよ。それよりさ・・・。」
アルベルの胸の上に手を載せながら。
「もう一回しようか?」
「あぁ?」
「暫く会えないからね。それに・・・」
小さな声で、朝の方がいいんだよ? と呟く。
そんなネルをアルベルは腕を少しずらして見やった。

目が合う。ネルはにっこり笑い、自分から唇を重ねる。
アルベルは。
紅い髪が顔にかかるのを気にすることも無く。
腕を背中にまわした。

「でも。」
少し顔を浮かせネルが言った。
「やっぱりダメだよ。一緒に・・・なんてさ。」
「あぁ?」
「だって、私はシランドを離れる気は、まるでないから。」
お国一番のネルだ。よりによってアーリグリフ方面へ行く事など考えられないのだろう。
だからこそ、このままの関係でいいと思っているのだ。
「それに、仕事も辞める気ないし。」
そう言うネルに対し、わざとらしく「はぁー」とため息を付いて見せ、アルベルは言った。
「阿呆。俺がいつ、こっちに来いって言った? オマエが良けりゃ、俺は何処でもいいんだ。
それに仕事を辞めろとも言ってない。好きでやってる仕事だろう? 言ってもどうせ聞きゃしないだろうが。」
ネルはじっとアルベルの暗い紅い目を覗き込んでいたが、
「そっか。」
と小さく呟き、再び目を伏せ、顔を埋(うず)めていった。


実現するかは別としても。
今は、そのコトバだけで充分だった。

 




短いのですが。マンガで描こうかと、思ってた・・・。つか、そのうち書く。
アルベルが自分から、暮らそうなんて言うかどうか、想像出来ないのですが(笑。
どっちかが言い出さなきゃ、始まりません。何も。

  なので、頑張ってください。(?)

これで、終わってるはずだったのですが、続きました。Page2へ→